毛穴の黒ずみってどうやってきれいにするの?
「オイリー肌の所謂脳膜炎は母親の胸に塗った鉛化粧水が原因である」と発表されてから内務省が取り締まりに動きだし、完全に市場から消えたのは昭和10年のことでした。害と知りつつ、なぜ鉛化粧水は使われ続けたのでしょう? 安かったから? お役所がのんきで取り締まりが遅れたから? 確かにそれもあったでしょう。ですが、何よりも化粧効果が優れていて、使うときれいになれたというのが一番の理由のようです。鉛化粧水はのびやつきに優れたものだったので、一度使ったら、ボソボソした化粧水など使う気にはとてもなれない。たとえ、それが有害だと知っていても。そして、楽しいことをしている時には、自分だけは大丈夫、と人間は考えてしまいがち。例えば今、タバコを吸っているあなただって、体に悪いと知ってはいても、自分が肺ガンになるなんて考えたりはしませんね。明治の女性だって、鏡に向かってニキビケアして、きれいになっていく自分をうっとり見ながら、私だけは大丈夫と思っていたに違いありません。鉛は口に入ると危険ですが、皮膚からは吸収されにくいので、「ちよつとぐらいなら平気よね」と自分にいい聞かせながら使い続けていたのではないでしょうか。ところで、世間を騒がせた中村福助の後日談。その後病状は好転したようで、明治26年には幾久園というメーカーの洗顔の広告に「この化粧水を使ったら、体調が良くなりました」という内容の宣伝文で登場しており、さらに明治3。年には自身の名をつけた福助ブランドで化粧水を売り出してもいます。巷で伝えられる「悲劇の人気女形」は、案外商魂たくましい人だったよう。そしてこのエピソードが示すものは、洗顔は明治の女性たちにとって必需品だった、ということです。生活に欠かせないものだからこそ、コスメの添加剤は大きく騒がれ、また、欠かせないものだからこそ、毒であっても使われ続けた。福助の洗顔商売は、そうした女性たちの化粧水に対する関心の高さの上に成り立っていたのです。名門女学生ほど化粧をする明治の女学生はお化粧していました。毒と知っても化粧水を塗るようにと、校長先も勧めていました。いやいや、こんなことで驚いていてはいけません。もっとすごい話もあります。「七歳の頃でした。子供の頃は、玉虫色に光る日紅ばかりつけていました。柳の箸に紅がつかないように食べなくてはいけませんとか、お化粧や髪型についていろいろなお行儀を教わったのは、小学校三年生ぐらいからでしょうか。その0 くらい小さな時から練習させると、大人になってもあれこれ言われずにすむということでした」「ポーラ文化研究所証言しているのは徳川基子さん。元15代将軍徳川慶喜の孫娘です。玉虫色に光る日紅というのは、金にも値するといわれる本紅のことで、こんな高価なものを7歳からつけて化粧の躾をされていたのが、華族のお嬢様だったのです。華族とは元大名と公家のことで、思春期の脂性肌時代以来の礼法が伝わるお家柄。明治の初期に女学校に入るような女のコというのは、こういう華族か豪商の恵まれたお嬢様がほとんどで、幼い頃からお化粧を躾られたお嬢様にとっては、だから、学校ヘニキビケアしていくのも当然のこと。お嬢様たちは、鹿鳴館で洋風ファッションをする一方で、誇り高く伝統も維持していたというわけです。
毛穴が開くとニキビが出来やすくなる
一方、明治時代にはミッションスクールも多くつくられましたが、こちらはどうだったでしょうか。スキンケア学校の女生徒には、一人として化粧をしているものがない。襟元などは真っ黒である。キリスト教の教えのもとでは化粧は悪徳として禁じられていたのか、生徒たちは一人も化粧をしていない。そして、そんな彼女たちを見て「襟元などは真っ黒」と筆者は不快に感じています。今なら「ノーニキビケア=清純な乙女」と考えるところでしょうが、当時の感覚では「ノーニキビケア=女の嗜みも知らぬ者」であり、「目につく」もだったのでしょう。それでは、名家の令嬢でもなくクリスチャンでもない女学生たちはどうしていたでしょうか。明治3.4。年代には雨後のタケノコのように女学校が設立され、女学生が急増します。近代合理主義による教育を受けた彼女たちは、親の世代の価値観を蹴飛ばすようなハイカラさんたちでしたが、やはりその多くはニキビケアをしていたようです。(東京女学館の生徒は)派手なことでは恐らく女学校中一番でせう。(略)真実の処、あの学校の生徒はお化粧が巧いのよ。お手のものらしいわ。(府立第一高等女学校の生徒は)一体に洗顔気が少なく、袴も中程の所につけて、結局おとなし向きのハイカラなのだわ。
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